どうリテンションを高めるか?
コンシューマー向けのプロダクト開発やUXデザインについて自分の思考を深めるためには始めた先週からNewsletter。
今回は2週目となり今回は「どうリテンションを高めるか?」というトピックで記事を書いてみました。
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リテンションの重要性
リテンションレートが重要。チャーンを防ぐのは重要。そんなことは、プロダクト開発に関わる人であれば理解していると思います。
でもなぜ重要なのでしょうか?
実はリテンションレートを5%向上した際、利益が25~95%も増加するということがハーバードビジネススクールのレポートそしてKPMGのレポートによっても明らかにされています。
結局リテンションレートこそが企業の収益の主なエンジンになるのです。
ではどうすればこのリテンションレートを高めることができるのでしょうか?
リテンションレートを高める
まずどうやってリテンションレートを高めるか?
最初に結論をまとめますと
内発的動機付けを高められるプロダクトか?
オンボーディングの質は高いか?
という2つの観点に収束すると考えています。
ではなぜこの2つが重要か?1つ1つ説明していきます。
内発的動機付けを高められるプロダクトか?
まず『内発的な動機付けを高められるプロダクトか?』に視点を置き、それを基に施策やプロダクトの改善を行うことで、リテンションレートを向上させることが可能だと考えています。
ではなぜ?『内発的動機付け』というものが重要なのでしょうか?
まず、リテンションレートを高める。つまりユーザーに毎日アプリを触ってもらえるよう習慣化させる(ハマらせる)必要がありますが、実は習慣化できている人は、あるキーファクターを抱えているからこそ習慣化が可能になっています。
そしてその、キーファクターというのが『内発的動機付けによる行動』なのです。
内発的動機付けとは「自発的に行動したい」といった動機づけのことであり、実際、多くの研究によっても内発的動機付けが高まっている状態であればあるほど、行動単位のパフォーマンスが上がり、持続性が高まることが分かっています。
実際の研究を上げると
ジョークが面白いか評価する仕事
そして コンピューターのテストを受ける仕事。報酬が高いのは後者だったため 後者に方が長続きするだろうと予測されました。
しかし報酬は実際の持続性に影響を与えなく、 むしろ前者の楽しい課題の方が長く持続したのです。
これより、行動が長期化する。そしてサービス内エンゲージメントが高まりやすいのは、「やりたいから。したいから行う」といった内発的動機づけによる行動なのです。
実際、ゲームやSNSなど毎日触っているサービス自発的に行動していませんか?
おそらく『外発的な報酬が欲しい!だから行動する』といった外発的動機づけによって毎日SNSを開いたりしている人は少ないと思います。
また上記の論文にも書いてありますが、外発的な動機付けによる行動はまず長期化しにくいのです。
こういった背景よりまずリテンションが高いサービスを構築するには内発的動機付けを高められる環境をプロダクト内に用意できてますか?という課題をクリアする必要があるのです。
内発的動機付けを高める。
ではどのようにして内発的動機付けを高めると良いのでしょうか?
実は内発的動機付けを高める理論は19世紀後半より研究されており、現在では自己決定理論というモチベーションを理論化した学術も確率されているくらい明確化されつつあります。
今回はこの自己決定理論、内発的動機付けに関するレビュー論文を参考にどうすれば内発的動機付けを高められるのか説明していきます。
まずざっくりと結論から説明すると、この「自律性欲求」「有能性欲求」「関係性欲求」といった人間の根底欲求を満たされることで内発的動機付けが高まると言われています。
1つ1つ説明していきます。
【自律性欲求】ユーザー自身が行動をコントロールできる環境を作ろう。
内発的動機付けを高めるためにまず、「ユーザー自身が自身の行動をコントロールできる環境を作る」という自律性欲求に従ったサービスを作ることを軸に考えると良い施策をサービス内に構築できると思います。
人間は本来、「自律性欲求」という自分の行動は自分で選択したい。コントロールできる環境にいたい。といった欲求を抱えている生き物であり、この欲求を満たされることで内発的動機付けが高まるのです。
例えばこの欲求の1つを活用した「タスクを選択させる」という手法があリます。
「自分で選択したタスク」と「課されたタスク」どちらがモチベーション湧きやすいか?
おそらく想像してもらえれば、やはり自分自身で選択したタスクの方がモチベーションが高まりやすいのは明確だと思います。
実は「選択をする」という行為だけでも自律性欲求が満たされ、その環境に対して多少ばかりの快感を覚えたり、好奇心を引き立てるのです。
この「タスクを選択させる」という手法はゲームによく活用されており、この活用ができてるからこそ、ユーザーは習慣化するわけです。
例えばモンストを見てみましょう。
実はモンストをこういった観点より見ると、以下のように選択という行為が、サービスのどこもかしこも設計されています。
この仕組みがあるこそ、ユーザーは好奇心を引き立てられ、行動したり快感を覚えたことでゲームをすること自体に楽しみになる。つまり内発的動機付けによって動機付けされるのです。
他にも自律性欲求はTwitterなどにも上手く活用されています。
Twitterではサービス参加後、自分のプロフィール写真を変更したり、名前やBioを変更させたりなど半強制的ではあるものの選択、自己決定の機会を与えていたり
また、オンボーディングで好きなカテゴリーなどを聞いてくるように設計されていたり、非常に優れたレコメンドアルゴリズムが構築されています。
これの何が凄く良いかというと、『自分の理想通りのタイムライン(レコメンド)が反映されたする』=『自分の行動がコントロールしている感』が出ることで自律性欲求が満たされるため、ユーザーは快感を覚えるのです。
自分の好きなカテゴリーを選択させるだけでも、『自分のためのサービスなんだ!』と、自律性欲求を刺激させることができるので、漫画、動画などのコンテンツ主軸のサービスはカテゴリー選択をオンボーディング時点で選択させると良いですね。
TikTok、Twitterなどは本当に凄く良い例で、本当にこの欲求に沿った凄く良いサービスだと思います。
【有能性欲求】短期的な周期で、ユーザー自身が有能性を感じられる環境を作ろう。
次に有能感欲求について説明していきます。
有能感欲求とは「自身が置かれている環境下で自らの力を発揮し自分の有能さを示したい」という欲求です
例えばTwitterやInstaでユーザーは自分のアイデンティティを証明したり、考えや意見を投稿しますが、これらに反応してもらうことで有能感欲求を満たすことができる例が分かりやすいですね。
この欲求を満たすことで内発的動機付けが高まり、行動が持続しやすいというわけです。承認欲求もこの有能性欲求の一種です。
また、この有能性欲求は短期的な周期で感じられているか?という点もまた重要になってきます。
ゲームではこういった短期的な周期で有能感を感じられるからこそ、内発的動機付けが高まりやすくユーザーは習慣化しやすいのです。
では逆に筋トレなどはどうでしょう?筋トレは結果が出た際は有能性欲求を感じることはできます。しかし結果が出るのはいつでしょうか?
最低3週間以上はかかってしまうのが現状であり、だからこそ結局挫折してしまうのです。
つまり、結局短期的な周期での有能性欲求を満たせているのか?という点がかなり重要だと言えるわけです。
では実際にどのようにサービス内に組み込むと良いのでしょうか?
まず1つの施策として、マイクロインタラクションをブラッシュアップする。つまり1つ1つの行動や目標達成時に演出を大げさに行なってみる施策が挙げられます
マイクロインタラクションを活用することで目標達成時の達成感、有能感が高まり、ユーザーの内発的動機付けが高まりやすくなるのです。
またゲーミフィケーションを導入してみるのも1つの手段です。
例えばDuolingoやピッコマが分かりやすい一例かなと思います。
目標達成時に達成感を演出したりどれだけ成長したのかを視認性が高いUIデザインにより可能にしていますし、他にもビンゴなどのゲーム要素によって有能性欲求を満たしやすい環境を構築できています。
だからこそ、ユーザーがハマっていくわけです。
【関係性欲求】他者との関係性を感じられている設計か?
最後に関係性欲求について説明していきます。
関係性欲求とは「他者との良好な関係を形成したい。貢献したい。」といった欲求のことを指します。
実際、教育環境で学習者同士や教師との関係性を築くことでどれだけの効果が得られるのかを探る研究を見ると
関係性が高ければ高いほど、学習者は自己決定的な学習態度を持つようになるなどの実例も出ているほど、関係性がある状態とない状態でのエンゲージメントの差は大きいとされています。
また、Pelotonという、ハードウェアのエアロバイクに加えサブスクでフィットネス動画コンテンツを提供している企業も、こういった関係性欲求に視点をおいたプロダクトを制作しています。
Pelotonでは
「ワークアウトクラス」
リアルタイム(ライブ)でインスタラクターが指導を受けられる「hear now」
同じクラスにいる他のユーザーの名前や成績を見ることが可能「High Fives」
他のユーザーにエールを送ることが可能
こういった形で他のPelotonユーザーとリアルタイムに応援し合ったり、競い合ったりできる機能があり、インストラクターやユーザー同士、関係性を高めることできます。
またこういったエールやインストラクターからの直接的な指導は、同時に短期的な有能性を得ることができています。
こういった内発的な動機付けを高める環境を整備されていることから、
NPS(顧客満足度)は91/100であり全米2位と高いScore
継続率(12ヶ月後に利用を続けている)も高く2022年第一四半期には92 %
といった凄まじい、リテンションレートを出しているのです。
ここまでのまとめ
ここまではリテンションを高めるためには、そもそも「ユーザーの内発的動機付けを高める必要があるよ」
そしてそのためには内発的動機付けにより行動を促す必要があり
「自律性欲求、有能性欲求、関係性欲求」を満たすような環境や支援が必要である。と説明しました。
逆に自律性や有能性を阻害する外的要因もあります。
以下がその外的要因です。
・監視状況
・締め切り期限
・ルールや制限
・ノルマ
・指示や命令
・競争や評価
しかしこういった外的要因も使い方によっては内発的動機付けを高められる契機になるため全てが全て悪いわけではないので使い方には注意が必要だと言う感じですね。
オンボーディングの質
次にオンボーディングの質がリテンションレートには重要だということを説明していきます。
最初のオンボーディング体験は非常に大事でどれだけ良いサービスを作ったとしても、オンボーディング体験が悪ければ2日目以降はチャーンしてしまいます。
実際に約7割以上のユーザーが、アプリをダウンロードしてから3~7日以内に離脱するということがわかっています。
人間と同じでファーストインプレッションが悪ければ、もう会うことは少なくなるのです。
だからこそ、良いオンボーディング体験を作る重要性があります。
このあたりは先週のNewsLetterの良いオンボーディングをどう作るか?で説明しているので、ぜひご覧頂けると嬉しいです。
まとめ
今回は「リテンションをどう高めるか?」というプロダクト開発する人であれば多くが陥りがちな問題に対してNewsletterを書いてみました。
まとめると、リテンションが高いサービスを構築するには
内発的動機付けを高められる環境をプロダクト内に用意できてますか?
良いオンボーディング体験を構築できているか?
という2つの観点に収束すると考えています。
ただこういったサービス、体験設計をUI /UXとして落とし込むのは非常に難易度が高いため、もしこの辺りを設計したい。といった事業者さんいましたら、僕の会社LabiではUXアドバイザリー、コンサルティング事業も行なっているため、お気軽にご連絡していただけると幸いです。Twitter
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今回も最後まで見ていただきありがとうございました!